従来の不動産取引では、宅地建物取引士が押印した書面を交付する必要があり、重要事項説明書や契約書は紙で手渡しするのが当たり前でした。しかし、2021年にデジタル社会形成法(デジタル改革関連法)が成立し、押印義務や書面交付義務が大幅に見直されました。
これに伴い宅建業法も改正され、重要事項説明書への宅建士の押印が不要となり、契約書や重要事項説明書(いわゆる35条書面・37条書面)の電子交付が認められました。2022年5月の改正宅建業法施行により、これらの書類の“完全電子化”が正式に解禁され、不動産業界はついに「オンライン完結の取引」が可能な時代に入りました。
電子化解禁前は社会実験として限定的な運用でしたが、現在は多くの書類がデジタル化でき、媒介契約書、レインズの登録証明書、35条書面、37条書面、賃貸借契約書、連帯保証契約などもオンラインで手続きできます。一方、公正証書が必要な契約はデジタル化が進行中で、今後の制度改正が期待されています。
オンラインでの不動産契約プロセスは、紙から電子へ置き換わっただけではなく、ユーザー体験としても合理化されています。
ポータルサイトや不動産会社の公式サイトで物件を探し、問い合わせはチャット・メール・ビデオ通話で完結。オンライン契約に対応しているかの確認も重要なポイントです。
現在は3種類の内覧方法が並存しています。
WEBフォームから申込み、身分証などの必要書類もアップロード。審査結果はメールで通知。
宅建士がZoom等で重要事項説明を行い、宅建士証の提示や説明内容の録画など、オンラインならではの手続きが整備されています。
契約内容の承諾後、契約書類は電子交付され、電子署名で締結。印紙税も不要となり、郵送や来店の手間が大幅に削減。電子証明書やタイムスタンプにより改ざん防止も担保されます。
初期費用はオンライン決済や振込。スマートロック導入物件ではデジタルキーの発行で来店不要に。
2020年以降、オンライン内覧は不動産会社にとって必須のサービスとなりました。
2025年現在では、次のような高度な機能を備えたサービスが一般化しています。
これらにより、地方・海外ユーザーや、忙しく来店できない層にもリーチでき、不動産会社にとって「取りこぼさない営業体制」を作る重要インフラになっています。
オンライン契約・オンライン内覧の普及により、次のようなメリットが明確になっています。
Z世代では8割以上が電子契約を好むという調査結果もあり、若年層を中心にオンライン完結型が「当たり前」の選択肢になりつつあります。
電子契約を導入した企業では、業務効率と顧客満足度の両面で改善が見られています。
オンライン契約にはいくつかの注意点もあります。
そのため、オンラインと現地訪問の「ハイブリッド型」運用が今後の標準になると見られています。
また、公正証書のデジタル化やAI×VRによる内覧自動化など、新しい技術も進行中。
不動産業界は、DXによって“対面が前提だった業務”から脱却し、非対面を軸にした新しいユーザー体験を構築するフェーズに入っています。